2022年07月30日
『手に感じる心』
手というのはとても不思議。コロナ禍の今は、めっきり触れ合うことがなくなってしまったけれど、芯体操でのレッスンの中で、どうしても触れなくてはならないときに、つい手が出てしまったりするときもある。しかし、この手の役割は見捨てられないことなので、空気のボールを感じながら、呼吸法で手と手の間にうごめく感触を味わって欲しいと一生懸命に取り組んでいる。
近年は、医療の現場では殆ど手で診るということはなくなっていると感じている。石川啄木が、その点を巧みに表現した詩句がある。
『思ふこと盗みきかるる如くにて つと胸を引きぬー 聴診器より』
啄木は肺結核のために27歳の若さで亡くなっているが、長く苦しい闘病生活に耐えかねている啄木を回診した医者が、聴診器を胸に当てようとしたとき、「苦しい治療はもうやめたい」、「家に帰りたい」などと思っている心の内を盗み聴かれるような気がして、すっと胸を引いてしまった、ということだそう。
また、別の句では
『脈をとる看護婦の手の あたたかき日あり つめたくかたき日もあり』 がある。
聴診器のような当時のハイテクなものは、得体の知れないものとして思わず胸を引いてしまったが、看護師の手による触診では、その手の感触の違いを楽しむ余裕がある。看護師よりも啄木の方が接触に敏感な感性を持っているのかもしれないと思わせる句である。
今のようなコロナ禍の現状になり、レッスンで大きく変わったことがある。それは密を避けるためでもあるのか、早めに来る人が少なくなってきたことだ。逆に言えば、それまではからだをさすり合うということが自然に発生していたことがあったからかもしれない。少しでも肩や背中をさすることで、お互いに気持ち良さそうになり自然に会話もあったように思う。
少なくともコロナ禍や戦争(ロシアなど)が始まるまでは、つい最近であるのに日本人は世界でもまれに、人に親切で温かい民族として知られていた。震災のとき、われ先にと暴動が起こることもなく、限られた食べ物を分け合ってしのいだ美談は世界的にも称賛を浴びている。日本人の繊細で他者の心情を気遣う性格というのは、日々の生活の中での敏感な触覚がつくり出したものかもしれない。
そんな中で少しずつでも 『手に感じる心』 を取り戻してみたいと思う。まずは、前述の空気のボールを感じてみよう!自分のからだの中に温かい心を取り戻して楽なからだにしてあげよう!決して屈せず、負けない心を大切に・・・切に願う。
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2022年07月24日
音の世界と表現の世界
読売新聞を購買されている方は、昨日からの「母なればこそ子と歩む」の記事を読まれているかと思いますが、昨日「上」、今日は「中」と連載です。続きが楽しみですが、ピアニスト・辻井伸行さんを育てた辻井いつ子さん(62)の取材文です。伸行さんを1988年9月に待望の第一子として授かりましたが、いつまでたっても目を開けてくれない我が子が、先天性の「小眼球症」と産婦人科医の夫から告げられたのは、数日後でした。全盲で光さえ感じられず、表情も乏しく、生活音に対して過度に敏感で、この子は一生美しいものも見られないのかと涙が止まらなかったそうです。
二人で過ごす昼間は、いつ子さんの好きなクラシックやジャズ、ポップスのCD
をいつも流していました。ブーニンが演奏するショパンの『英雄ポロネーズ』もお気に入りの1枚で8カ月頃に伸行さんは曲に合わせてリズムを取り、別のピアニストに替えると、途端に不機嫌になり、足の動きも止まってしまったそうです。少しでも心が豊かにという願いから1歳5か月の時にピアノの先生につきました。息子が3度目のクリスマスにいつ子さんが『ジングルベル』を口ずさんでいた時、隣の部屋からピアノの伴奏が聞こえてきて、あわててふすまを開けると、10本の指を使っておもちゃのピアノを弾く伸行さんの姿にびっくりしたのです。まだ、おむつも取れない2歳3カ月の息子が、歌に合わせて演奏していたのですから・・・
見えない世界は『暗闇』ではない、音楽を楽しむ姿に救われたと言われます。
また、羽生結弦さん(27)の自称ファンの私ですが、プロに転向されることになりました。フィギュアスケート男子で五輪2連覇を果たし、国民栄誉賞を受賞され、クワッドアクセル(4回転半ジャンプ)に挑戦し国際スケート連合(ISU)公認大会で初めて認定されたのはすごいですね。しかし、私の思いは彼の音に対する世界があるから魅了されてきました。勝負の世界ではありましたが、求めていた姿は競技ではないと思ってきました。彼の音へのこだわりは体を動かすことをやり続けてきた私にも、僭越ながら理解できることがあります。少しは舞台にも関わってきた自分の感覚の原点でもありました。音といっても音に動きを合わせることではありません。からだのエネルギー効率を高めるというのでしょうか。呼吸と全身の繋ぎが表現となる源であると感じています。勝ち負けではなく規定にしばられることなく自分の喜び、哀しみ、いたわり、表現といっても作られたものではなく、心に溢れる想いで生きること・・・『生きる』そのものが、自分の証であること・・・羽生結弦さんのこれからが、表現者として求め続け、人々の道標でありますように願っています。
そして、微力ながら自分もそんな思い、生きかたを目指してみたいと思います。
今日は、辻井伸行さん、羽生弦結さんに、そして自分にもエールを送りたいです。
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2022年07月17日
治療法の選びかた
「病気になった時は、健康を回復するためにどうすべきか、どんな行動をとるべきかを決めなければならない。その一連の行動を決めるのは自分の責任である。その責任を回避すれば、自分に代わってだれかが決めることになるが、それが自分にとって必ずしも最良の選択になるとはかぎらない。もっとも重要な判断のポイントは、医師などの専門家に診てもらうことが心身の治療系を助けることになるか、それとも妨げることになるかの一点である。判断を誤らないためには、自分の病気の実態をよく理解し、自発的治癒が起こる可能性を損なわずに治療できる方法が現代医学にあるかどうかを知る必要がある。」
アンドルー・ワイル氏の著書に書かれた言葉であります。この著書が出てからもう20年以上が経ちました。医学の進歩や、有効な代替え医療などもあるかもしれませんが、同時期に私のからだに起きたことは、はるかに年月を超えたとしても今なおこの言葉が生きているのです。
分らないままに選択をすることのないようなからだをつくりたい…そんな思いで「芯体操」の道を歩んできました。病名の付かない症状と向き合いながら、本来ならこうなっていたのではないかとさまざまに思うことあれど、からだに向き合って共に生きることが私の選択であったのです。その間、色々な方に出会ってきましたが、やはり、ご自分の信念を持っている人は強いと感じます。仮に手術を選んだとしても、からだを知っている方は、回復力がすごいですね。
とにかく、自分のからだにとって何をすれば良いのかそれだけはしっかり学んで頂きたいと思います。何も分からないで人頼みだけは避けて欲しいのです。私が今、こうしてレッスンを続けられていることは、自分でからだのことが分かるからです。分かれば、適したお付き合いの方法もあるかと思います。特に人に勧められてからだを預けることはとても、怖いことですね。「芯体操」だって、間違ったからだ使いをすれば、良くなるはずが悪くなることだってあります。
からだの使いかたはとても繊細にお伝えできるように心がけています。手術などや、レントゲン、お薬など慎重に取り組んでくださいね。痛みが軽減することや、薬害を考えますとリスクは大きいです。自然に学ぶことはいっぱいあります。からだがどうなれば良いのか今一度考えてみてください。
からだづくりに必要な「芯体操」は毎日必要な運動です。頑張りましょうね!
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2022年07月10日
久しぶりにOSKの舞台
少なくとも3年前コロナ禍に突入してからは、観劇から遠のき本当に久しぶり!OSKのファンになってから20年以上は超えているでしょうか?2003年に奈良のあやめ池最終公演となっていますが、その年にOSK日本歌劇団の解散式が行われました。しかし、2004年4月にはOSK存続の会旗揚げ公演を大阪松竹座で上演され見事に「NewOSK日本歌劇団」の名称で活動を開始しました。
わたしとめぐさんはそのあやめ池の舞台を見に行っていました。がらんとした会場には確かほぼ、私たちだけか、もう1組いたかの状態でした。どうされるのかと思っていましたが、なんと劇団員のメンバーは、笑顔を絶やすことなく最後まで一生懸命に演じきったのです。それが強く私の魂を揺さぶりました。
その後、桜花(おうか)昇ぼるさんの活躍で毎年の「春のおどり」など盛り上がり、宝塚歌劇団の舞台も数多く見ましたが、いつもあやめ池の舞台が忘れられません。ダンスなどは当時、「シャボン玉ホリデー」などにも出演し活躍されていた名倉加代子さんが振り付けされ、宝塚歌劇や、劇団四季などは勿論、今でもOSKの振り付けもずっと続けられています。1940年生まれといいますから、すごいですね。現在、82歳ということですね!
今日の舞台を見ても、素敵なセンスを感じました。振付家は何人かが担当されていますが、やはりかっこいいねというダンスは彼女の振り付けられたダンスでした。話が逸れましたが、2014年に桜花昇ぼるさんが退団され、がっかりしましたが、その背を見て踊っていた、悠浦あやとさんがいつも目を引いていてすっかりファンになっていました。2016年、大阪近鉄アート館で、彼女主演の「紅燃ゆる〜真田幸村 紅蓮の奏乱〜」が上演されました。まだ慣れない主演の大作を必死で演じきった姿に感動しました。もう彼女の時代だと、予感した時でもありました。
しかし2018年も主演を果たしましたが、その直後に突然、彼女の姿が消えました!OSKのHPからも、何の説明もなくその存在はなくなってしまったのです。病気なのかトラブルなのか、とっても悲しい出来事でした。宝塚ではトップは一人でも何組かあるので、その辺をうまくコントロールできるのでしょう。OSKの現状は、3つぐらいのチームに分けて、それぞれの演目を手分けしていたようですが、地方をまわったり、小さな舞台だったりで心身ともに疲れ切ったのではないかという憶測しかありません。
OSKの今後が心配ですが、苦節を味わいながらの団員に幸あれと祈るばかりです。理不尽な世の中ですが、早く平和な世界が来るよう頑張りたいですね。
考えさせられた1日になりました。
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2022年07月03日
今を生きる からだづくりを楽しむ
からだの調子が良い日、悪い日、からだにアクシデントを抱えて生きている私にとっては、日曜日以外は、毎日の芯体操レッスンが、少々きつい。しかし、辛いと言ってからだと向き合わなければ生きられない。そんなことから多くの人との繋がりを大切に思っています。
説明をしなくても伝わればとの想いで、「パーフェクト」のような音楽に合わせて気持ち良く動けチャレンジできるように、全身運動を丁寧に繰り返し繋ぐという芯体操独自の運動を次々と生み出しています。繋ぐという動作は私からすれば、見えることですが例えば「腕のつながり」は、肩甲骨、肘関節、手首関節の角度や伸びる方向と、背骨との引き合いが一人ひとり違うので難しいのかもしれないですね。
先日のレッスンでは、お腹を感じることが分からないとの質問がありました。触ってみると見事にお腹力が抜けていて腕自体を伸ばす引き合いが生まれていないわけです。そのために坐骨乗り運動があるのですが、やはりお腹力をつけないと、縮めて寝起きしているだけでは肩で腕を引っ張っているだけなので踵(かかと)、膝裏のクッションが生まれないということになるのです。
言葉で言うと余計難しくなりますか?こうして、その感覚をみなさんと共有しようとすると、一人ひとりに伝えるためについ時間を取ってしまい 「ああ!やっちゃった!」 ということになるのです。芸能人やアスリートのように、専属トレーナーを頼めれば良いですし、私も1人なら、楽かもしれませんがやはり、大変な思いをしている方も多いのではないでしょうか。これが一番、大きな問題であると思って頑張っています。
先週の5週目のお休みに、久しぶりにじっくりとカレーをつくりました。玉ねぎを30分炒めてショウガとニンニクも入れてまた炒める、大きなトマトをみじん切りにして焼いたお肉、野菜はニンジンだけでさらに煮込みますがこんな時間も必要です。
あとは時間があれば、もっと断捨離したいです。落ち着いた家具と、気に入ったカップに囲まれていれば、要らない服も、読んだ本も何もかも無くしたい。整理すると言えば億劫になりますが、時間と元気なからだがあれば可能でしょうか。大好きな紅茶があれば幸せです。「素敵な時間の使いかた」 勿論、すてきなレッスンができれば、みなさんと一緒に幸せであればそれ以上のことはありません。
「今を生きる」 ためには やはりからだづくりが一番かもしれませんね。
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