2022年04月02日

新井満(まん)さんからのメッセージ

 
 不覚にも彼の名前を知ったのはごく最近です。1964年6月、彼が高校3年生の夏に新潟を襲ったマグニチュード7の直下型地震、直後の津波により、街中が液状化し、一瞬で日常を奪われた体験を味わっておられます。からだにはケガ一つなかったのですが心に傷を負い、恐怖と絶望感に襲われたと言います。1965年の春、上智大学に入学し希望にあふれる学生生活を送るはずがPTSD、今でいう心的外傷後ストレス障害に陥ります。

 日本ではその後、1995年に阪神・淡路大震災、2011年には東日本大震災がありました。どれだけの人が、命を亡くされたでしょう。また、たとえ命は助かってもたくさんの人が心に傷を負っていることでしょう。彼も1年間療養したのち、大学に復学したけれど頬はこけ、体は骸骨のようにやせ細り、夢や希望、志もなくまるで生きる屍みたいだったそうです。「自分は何のために生きているんだろう。いっそ死んだ方が楽なんじゃないか」と思っていたある休日、ふらっと散歩に出かけたときに周囲に目をやった瞬間、言いようもない美しい風景が目に飛び込んできました。季節は春、黄色いレンギョウの花が土手一面に咲き乱れていて、感動のあまり動くこともできず、知らず知らず涙が流れてきたこのとき、「死」に向かって振れていた心の針が、「生」に向かって振れ始めたのを感じたそうです。

 「死」に向かって心の針が振れかけている人に他人の言葉を聞き入れる余裕はないのです。振れるのは感動、おどろき、無我夢中にしてくれる何か・・・無数の美しい風景や芸術作品などから生きる喜びを見出すことしか方法がないと言われます。

 その言葉に惹かれた私は、初めて彼が大ヒット曲の「千の風になって」の翻訳と作曲者であり、1988年に「尋ね人の時間」で受けた芥川賞作家であることを知りました。「千の風になって あの大きな空を 吹きわたっています」 「秋には光になって 畑にふりそそぐ」 「冬はダイヤの様にきらめく雪になる」 「朝は鳥になって あなたを目覚めさせる」 「夜は星になって あなたを見守る」

 彼の歌う「千の風になって」は、私の心にしみこんできました。言葉の一つ一つがそれまでに聞いていた同じ歌とは違うと感じました。土手のレンギョウの花に感動した彼は、道行く人に「少し立ち止まって、この美しい花を見てみませんか」と声を掛けたそうです。10人ぐらいの人に無視されあとひとり声をかけてダメだったら止めようとそう思って声をかけたのが、70歳ぐらいの紳士、「なるほど美しい風景だね。君に言われるまで気が付かなかった。教えてくれてありがとう」その言葉が彼の心にしみいりました。「ありがとう」という言葉、本当に大切なお話ですね。

URL http://www.shintaisou.j

posted by 津田 美智子 at 21:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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